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バルブを学ぶ

バルブとは何か ー その役割、種類と構造

「バルブ」と聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか。身近なところでは、水道の蛇口やガスの元栓もバルブの一種です。そのほか、普段は気づかない多くのところでバルブは活躍しています。バルブとはどんな役割を担うものなのか、また、どんな種類があり、それぞれどのような構造なのか。身近なようで意外と知らないバルブについて、あらためて考えてみます。

バルブにはどんな役割があるのか

 JIS(日本産業規格)の「バルブ用語」規格によると、バルブとは、「流体を通したり、止めたり、制御したりするため、流路を開閉することができる可動機構をもつ機器の総称」とされています。流体とは、主に液体と気体、それらが混ざったものなどを指します。
 身近な例では、水道の蛇口やガス栓のほか、ボイラー、自動車のエンジン、さらには発電所、工場のラインや産業機器など、社会のあらゆる場所で使われています。中を流れる流体も、液体では水道水のような常温の水だけでなく、熱湯、飲料やアルコール、薬品類、油やガソリン、気体では水蒸気、ガスや空気など多岐にわたります。
 バルブは英語で「valve」、日本語では「弁」と言います。バルブと弁の使い分けについて、JISのバルブ用語規格には「用途、種類、形式などを表す修飾語が付くものには『バルブ』という用語に代えて,通常、『弁』という用語を用いる」と書かれています。弁の用法としては、例えば安全弁や圧力弁、玉形弁といったものが挙げられるでしょう。この基準に基づくと、チャッキバルブはチャッキ弁、フートバルブはフート弁となりますが、一般的にはカタカナ語のあとにつく場合は「バルブ」と言うケースが多いようです。
 水道の蛇口を「給水栓」と呼ぶように水道に関係するバルブ、あるいは「ガス栓」や「消火栓」のように、流体の放出や消費を制御するバルブは「栓(Plug)」と呼ばれることもあります。また、流体を遮断する目的のバルブは「コック(cock)」とも呼ばれます。

バルブの構造 ――― 基本構成部品

 流体を通したり止めたり、流れを制御したりするバルブは、どのような構造をしているのでしょうか。その役割上、すべての種類のバルブには「流体の通路を開閉することのできる可動機構」があります。それが「弁体」と呼ばれる部分で、バルブの用途や種類を決定づける重要な要素です。またそのほかにも、全体を構成する基本的な部品がいくつかあります。

【基本構成部品】
 ・弁箱(本体、胴、ボディ):流路および配管との接続部分を持ち、流路の主体部分を構成する耐圧部品。
 ・弁体(ディスク、プラグ、ゲート):流体を制御するために可動し、弁閉止時に弁座と密着してバルブの閉止機能を果たす部品。
 ・弁座(シート):バルブが閉止位置にあるとき、弁体を受ける部位を持つ部品。
 ・弁棒(ステム):駆動部からの操作力を弁体に伝達する部品。
 ・パッキン:回転運動や往復運動をする機器の密封に用いるシールの総称。
 ・ストレーナー:流体中のごみ、スケール(湯垢)などを分離、除去するろ過部品。
 ・ハンドル:バルブを手動で操作するための取っ手の総称。

バルブの種類 ――― それぞれの特徴・用途

 バルブには多くの種類があり、一般的には弁体の形状や機能によって区分されています。流体を制御するという役割は共通していますが、種類ごとに特性は大きく異なり、導入の際には、使用条件などを踏まえて最適なものを選定することが大切です。以下、代表的なバルブの種類と、それぞれの特徴、用途などについてご紹介します。

(1)チャッキバルブ(チャッキ弁、逆止弁)
 流体の流れを常に一定方向に保ち、逆流を防止する機能を持つバルブです。給排水衛生設備で広く使われ、用途に応じていくつかの種類があります。

■スイング式(スイングチャッキバルブ)
 代表的なチャッキバルブで、中低層のビル、工場やプラント設備などで用いられています。弁体は円板形で、その一部がヒンジ(蝶番)で弁箱に接続されている構造です。ポンプが動き流体が流れると、その圧力を受けた弁体がドアのように開いて流路を開放し、ポンプが停止すると逆流により弁体が弁座に押しつけられて閉鎖する仕組みです。
 流体の流れがほぼ直線になり、抵抗が少ないことが特長です。流体が下から上に流れる垂直配管や、水平配管でも使用されますが、閉止時に弁体を押しつける力が弱いため、水平配管では漏水が起きることがあります。
 また、垂直配管の場合、揚程(ポンプが流体を吸い上げる高さ)が高い配管などではウォーターハンマー(水撃)現象が発生します。これは、強い逆流の圧力によって弁体が急激に閉じられることにより、配管内に瞬間的に高水圧がかかり衝撃が発生する現象で、高水圧によって配管、ポンプ、バルブ、継手などに過度な負荷をかけ、それらの破損を招きます。このウォーターハンマーを防ぐために、スイング式チャッキバルブの適用場所は、揚程が低いなど、逆流の圧力が少ない条件の配管に限られます。

スイング式チャッキバルブ_20200909

■リフト式(リフトチャッキバルブ)
 弁箱または蓋に設けたガイドによって、弁体が弁座に対して垂直に動いて開閉する構造のバルブです。ポンプが動くと流体の流れで弁体が押し上げられてバルブを開き、ポンプが停止すると弁体の重みで自然に下降し、閉じる仕組みになっています。
 構造が単純で可動部が少なく、故障しにくいという長所があります。ただ、その構造によって流体の流れがS字やクランク状になることから抵抗が大きく、主に小口径の配管に用いられます。また、弁体が垂直にスライドする構造のため、水平配管のみに使用されます。

リフト式逆止弁

■スモレンスキ式(スモレンスキ・チャッキバルブ)
 リフト式の一種ですが、構造は大きく異なります。急閉鎖型のリフト式チャッキバルブとも呼ばれ、内蔵したスプリングの力でポンプ停止後の逆流発生前に弁体を閉じることにより、ウォーターハンマーの発生を防ぐ仕組みとなっています。
 ポンプが動くと流体の力で弁体が押し上げられ、ポンプが停止すると流体の圧力が弱まり、スプリングの反発力で弁体を閉じます。その構造上、弁体が常に流路の中央に位置するために抵抗が大きいというデメリットがあります。一方で、ウォーターハンマーが発生しないことから揚程の高い高層ビルでも使用でき、水道事業所、工場、プラント設備などでも広く導入されています。

スモレンSM型_20200909

■ウエハー式/デュアルプレート式(ウエハーチャッキバルブ/デュアルプレートチャッキバルブ)
 半円板状の2枚の弁体をスプリングとヒンジピンで弁箱に取り付けた構造で、ポンプが動くと2枚の弁体が流体の流れる方向に90度倒れ、中央で重なる状態になるため、流路が開かれます。ポンプを停止するとスプリングの力で弁体が元の位置に戻り、円板状になって流路を閉じる仕組みです。
 スモレンスキ式と同様に逆流発生前に弁体を閉じるため、ウォーターハンマーが起きません。弁体の開きが大きくて流体が流れやすく、抵抗損失が少ない点も特長です。また、バルブ本体にはフランジがないシンプルな構造で、配管のフランジを利用して挟み込むように設置することで簡単に取り付けられます。薄型・軽量で設置スペースをとらないことから、ポンプ室が手狭な中規模ビル、工場などでよく利用されています。
 一方、2枚の弁体が中心のヒンジ部のみで支えられている構造のため、耐久性は低めです。水平・垂直どちらの配管でも使用できますが、ポンプのすぐ上や配管のエルボ部分など流れが偏る場所に設置すると弁体にかかる圧力が偏り、耐久性が低下します。

ウエハーチャッキ_20200909

■ボール式(ボールチャッキバルブ)
 弁体がゴム製のボールで、ポンプが動くと流体の力で押し上げられて流路が開き、停止すると逆流と引力によって元の位置に戻り、流路を閉じる仕組みのバルブです。
ほかのタイプと異なり弁体をつなぐヒンジなどがありません。シンプルで異物などが絡まりにくく、メンテナンスがしやすい構造のため、汚水・廃水など異物の混入が多い流体に多く適用されています。
 水平、垂直配管のどちらにも使用できますが、スイング式と同様にポンプ停止時の逆流とともに弁体が閉じるため、揚程が高く逆流の大きい配管ではウォーターハンマーが発生してしまいます。また、大口径、高圧力に対応しにくい構造です。

ボールチャッキ_20200909

(2)ゲートバルブ(仕切弁)
 板状の弁体で、流路を垂直に仕切って開閉を行う構造のバルブです。流路を完全に開放する/完全に閉鎖するという目的で用いられ、流量の調節は行いません。半開状態で使用すると、流体の流れを受けて弁体が細かく振動し、破損などのトラブルにつながってしまうためです。
 開放時は流体の流れが一直線上になるため損失が小さく、閉鎖時にはしっかりと流体を止める高い止水力を持ちます。
 弁体や弁箱の形などによるバリエーションが多く、弁体がくさび状のウェッジ仕切弁、2つの弁体を組み合わせたパラレルスライド弁やダブルディスク仕切弁、流路の中心部分が狭めてあるベンチュリポート仕切弁などがあります。
 弁体の開閉はハンドルを回して行うため、急な開閉や頻繁な開閉が必要な場所には向きません。また、ハンドルと弁体の分、縦方向の寸法が大きくなるため、狭い場所での使用にも向きません。例えば、水道の配水本管のように口径の大きい管に取り付けられ、工事の際に止水する、プラントの配管でメンテナンス時に止水するといった目的で利用されています。

ゲートバルブ

(3)グローブバルブ(玉形弁)
 弁箱が球形であることから、玉形弁、グローブ(globe:球体)弁などと呼ばれるバルブです。入口の中心線と出口の中心線とが一直線上にあり、流体の流れはS字状となります。中央に設けられた隔壁の隙間に弁体を押しつけて塞ぐという構造で、ハンドルを回して開閉するため、急な開け閉めはできません。反面、流体の流量を調節する特性に優れ、止水性能も高いバルブです。
 流れがS字状になることから抵抗が大きく、損失を抑える必要がある場所には向いていませんが、優れた流量調整の能力を利用して、水道の蛇口などに多く利用されています。流量調整を目的とする場合は、弁体が細いタイプのニードル弁がよく用いられます。

グローブバルブ

(4)ボールバルブ(ボール弁)
 ボール状の弁体が弁箱の中で回転することで開閉する構造で、弁体には貫通孔のある全球のタイプと半球のタイプがあります。貫通孔の向きを流路に合わせると全開、流路に対して直角に向けると全閉するしくみで、この操作をレバーの90度回転で行います。開閉操作が素早く簡単にでき、流路が直線になるため抵抗が少ないといった特性から、ガスの元栓をはじめ広範囲の用途に用いられています。
 ゲートバルブと同様に流量の調整には不向きで、基本的に全開/全閉の目的で使用されます。ゲートバルブよりもサイズをコンパクトにできること、流れの方向を切り替える三方弁に利用しやすいといった長所がある一方、弁座の素材に樹脂を用いることが多く、使用温度や流体の種類が制限されることがあります。また、急な閉鎖操作によるウォーターハンマーにも注意が必要です。

ボールバルブ

(5)バタフライバルブ(バタフライ弁)
 円板状の弁体を、弁棒を軸として弁箱内で90度回転させることで開閉する仕組みのバルブです。ボールバルブと同様に開閉が素早く簡単にできることに加え、流量調整機能にも優れていることがバタフライバルブの特長です。また、本体がコンパクトなため設置スペースをとらず、構造がシンプルで配管設置作業も容易です。
 省スペースで設置できる点を活かし、機械室など配管が入り組んだ場所によく用いられます。弁座の素材によって、流体の温度や圧力、種類が制限されることがあるほか、急な操作でウォーターハンマーが発生する可能性もあるため、操作には注意が必要です。

バタフライバルブ

まとめ

 流体を制御するというバルブの仕事は配管の内部で行われているため、水道の蛇口のように普段よく目にするバルブでも、その構造や働きがどうなっているのか、あまり意識することはないでしょう。こうしてあらためて見てみると、バルブには多くの種類があり、その特性に合わせてさまざまな用途で用いられていることがわかります。
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▼チャッキバルブ製品一覧
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▼スモレンスキ・グランドフートバルブSG
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