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バルブを学ぶ

バルブの固着はなぜ起きる? ―― 原因、対処法と予防法

 しばらく使用していなかった設備、いざ動かそうと思ったらバルブが開かない…。そんな経験はないでしょうか。バルブの故障事例で多く見られる「固着」は、一度発生してしまうと対処に手間取ることから、なるべく避けたいトラブルの1つです。ここでは、その主な原因と対処法、予防法をご紹介します。

バルブの固着は、なぜ起きてしまうのか

 バルブのトラブルで特に困るのが、バルブが閉じたまま、あるいは開いたままで動かなくなってしまう「固着」です。バルブの固着にはさまざまなケースがありますが、原因を調べていくと、使用頻度、経年劣化、流体の種類、バルブの構造などの要素が関係していることがわかってきました。なぜバルブの固着は発生してしまうのか。主な原因を以下にまとめます。

(1)設備・ラインの使用頻度が低い
 長期間にわたって開閉操作のないバルブ、例えば防火水槽の給水管末端に設置されたフートバルブ(フート弁)などでは、ボディや弁体、ヒンジ(蝶番)などに腐食(さび)が発生し固着することがあります。また、高粘度流体や粉体を扱う設備・ラインの場合、使用頻度が低いと残留物などが部品に付着しやすくなり、堆積して固着の原因となります。
ゲートバルブのようにハンドルで開閉するタイプのバルブでは、長期間、操作をしないことでハンドルのねじ込み部や軸とパッキンの接触部が固着し、ハンドルが回せなくなるケースも見られます。

(2)長期間の使用で消耗部品が劣化した
 経年劣化や通常消耗はどのような設備でも生じますが、バルブの場合は長期間にわたって使用することでパッキン、弁体、ヒンジなどの消耗部品が劣化、破損して固着を招くことがあります。特に、高温・高圧蒸気のような負荷が大きい流体を流すラインでは、パッキンの劣化や金属部の腐食が発生しやすく、バルブの固着も起きやすくなります。

(3)無機塩類を多く含む流体を扱う
 温泉水や、水処理剤を添加した地下水などを扱うラインでは、流体中に多く含まれるカルシウム、マグネシウムなどの無機塩類が析出し、設備に付着するスケールが発生します。バルブのヒンジ部分などにスケールが発生すると固着の原因となります。

(4)粘性の高い流体を扱う
 スラリー(液体と固体粒子が混合した流体)や油などの高粘度な流体を扱うラインでは、スイング式チャッキバルブのヒンジ部分が開放状態で固着してしまうことがあります。

(5)閉めすぎ、開けすぎ
 ゲートバルブの場合、バルブをきつく閉めすぎてしまった、逆に限界以上に開けてしまったことが原因による固着も見られます。

(6)スイング式チャッキバルブの構造
 普段は主にポンプを動かしたままで、1か月に1回ぐらい停止するといった使用環境でスイング式チャッキバルブを使用している場合、ヒンジのある構造に特有のトラブルとして、弁が開放状態のまま固着する事象が多く発生します。

バルブ固着の対処法と、固着を予防する方法

 さまざまな原因で起きるバルブの固着。一度、発生してしまうと修理することはかなり困難でコストもかかります。ハンドル部のみの固着であれば、振動を発生させる装置で緩められるケースもありますが、部材の劣化や腐食、残留物の堆積などによる固着は部品やバルブ自体を交換するしか対処法はありません。固着によって突然ラインが止まってしまうといったトラブルを防ぐためには、普段から予防策を実行しておくことが重要です。
ケースごとの予防策を以下にまとめました。

(1)設備・ラインの使用頻度が低い場合
 定期点検を必ず実施します。点検を行っていても固着が発生した場合は、点検の頻度を増やしましょう。あまり使用しない設備でも、動作確認だけはこまめに行うことが推奨されます。できれば年に1回以上は、分解清掃を行ってください。

(2)経年劣化、通常消耗による固着の場合
 予防保全を原則として、定期的にメンテナンスを実施し、消耗部品を交換しておきます。修理や部品交換よりもバルブごと交換した方が安価な場合もありますが、交換の頻度が高い場合、より耐久性の高いバルブに入れ替えることでライフサイクルコスト(LCC)下げることも可能です

(3)流体中の成分による固着の場合
 スケールは非常に硬く水に溶けにくいため、付着してしまうと除去するのは困難です。バルブごと交換する必要があります。

(4)粘性の高い流体による固着の場合
 高粘度流体に対応したバルブを選択します。

(5)ハンドルの回しすぎによる固着の場合
 操作の際に限界まで回さないようにします。バルブが全開になるまでハンドルを回したら、少し(45度程度)戻して遊びを持たせておくことがポイントです。

(6)スイング式チャッキバルブ特有の固着の場合
 スイング式チャッキバルブが開放状態で固着してしまった場合、バルブ自体の交換が必要になります。固着の発生によりポンプ停止時に逆流が起き、ポンプが破損することもあるため、固着が起きにくいバルブの採用が推奨されます。

バルブの固着でお困りなら、イシザキにお任せください

 予期せず発生するバルブの固着は、設備の稼動計画や生産計画の変更、想定外の修理費用の発生など、企業や組織の活動にさまざまな影響をもたらします。ただ、使用状況や流体などの条件によって固着を防ぐことが難しい設備もあり、その場合は固着が発生しにくいバルブに交換することが最も有効な対策となります。
株式会社イシザキの「スモレンスキ・チャッキバルブ」は、従来のチャッキバルブにつきものであったウォーターハンマーだけでなく固着も発生しにくいという特徴を持ち、多くの現場で高い評価をいただいています。固着対策として導入され、改善に寄与した事例をご紹介します。

【事例1】スラリー排水による固着がスモレンスキ・チャッキバルブ採用により改善。

スイング 固着

<課題>
固形物を含むスラリー排水を処理場へ送水するラインで使用していたスイング式チャッキバルブのヒンジ部分がスラリーにより固着、弁が開放状態のままになってしまう。固着のたびにバルブごと交換していた。

<ソリューション>
従来のバルブは1年以内に固着していたが、採用したスモレンスキ・チャッキバルブは2年以上経っても固着の発生がなく、手間が大きく軽減された。

※事例の詳細はこちらへ
https://ishizaki.biz/topics/?p=885

【事例2】工業用水で固着が発生し、逆流によりポンプが破損していた。スモレンスキ・チャッキバルブで解決。

事例2

<課題>
冷却水として大量の工業用水を流していた金属工場のラインで、スイング式チャッキバルブが開放したまま固着。1か月に1回ポンプを停止すると、ポンプ側への逆流が発生しポンプの部品が破損していた。修理費用や生産への影響が甚大。

<ソリューション>
水質に問題があり固着は仕方ないことと諦めていたが、スモレンスキ・チャッキバルブを採用したところ、固着による逆流がまったくなくなった。

※事例の詳細はこちらへ
https://ishizaki.biz/topics/?p=768

【事例3】水処理剤の影響により2か月で固着。スモレンスキ・チャッキバルブで交換の手間とコストが解消された。

冷却用

<課題>
冷却水として井戸水を大量に使用する食品工場では、水質を保つために添加する水処理剤によりスケールが堆積し、スイング式チャッキバルブが2か月で固着していた。逆流により冷却槽の周辺が水浸しになり、バルブを交換する手間もかかっていた。

<ソリューション>
スモレンスキ・チャッキバルブを設置して4か月以上固着が起きていない。冷却槽からの溢水やバルブ交換がなくなり、負担が軽減した。

※事例の詳細はこちらへ
https://ishizaki.biz/topics/?p=943

まとめ

 バルブの固着は、使用頻度、経年劣化、流体の性質、操作および構造の問題など、さまざまな原因で発生します。定期点検やこまめなメンテナンスといった対策により、ある程度は予防することもできますが、特にスイング式チャッキバルブには、ヒンジ部分に固着が発生しやすいという課題があります。
 株式会社イシザキの「スモレンスキ・チャッキバルブ」はスイング式チャッキバルブと異なりヒンジがなく、内蔵したスプリングの力で弁体を閉じるという固着に強い構造となっています。長年、仕方がないと諦めていたバルブの問題を、私たちイシザキの製品で解決された現場が増えています。バルブの固着にお悩みなら、ぜひ一度ご相談ください。

※製品についての詳細は以下をご参照ください。

▼スモレンスキ・チャッキバルブの特徴
https://ishizaki.biz/s_02.html

▼チャッキバルブ 製品一覧
https://ishizaki.biz/stock.html

▼カタログ・ダウンロード
https://ishizaki.biz/catalog/index.html