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バルブを学ぶ

チャッキバルブとは ――その役割と種類、構造、仕組み

流体の逆流を防ぐため、給排水衛生設備で広く用いられているチャッキバルブ。ここでは、チャッキバルブとは何か。どのようなタイプがあり、どのような素材が用いられているのかなどについてご紹介します。

チャッキバルブとは

チャッキバルブ(チャッキ弁)は「逆止弁」や「逆流防止弁」、「チェックバルブ」とも呼ばれ、水などの流体の逆流を防ぐ目的で配管に取り付けられます。英語ではcheck(せき止める)+valve(弁)という意味から「check valve」と呼ばれています。構造によりいくつかの種類に分けられますが、ポンプが始動すると流体の流れる圧力によって弁体が開かれ、停止すると逆流しようとする流体の圧力などにより自然に閉鎖する仕組みとなっています。

チャッキバルブの種類、それぞれの構造と仕組み

チャッキバルブは、構造の違いによって大きく4種類に分類できます。それぞれの構造と仕組みについて見ていきましょう。

(1) スイング式
・チャッキバルブの代表的な形式で、中低層のビル、工場、プラント設備などに普及している。
・筒状の部品(弁箱)の内部に円板状の弁体があり、ヒンジ(蝶番)とアームで弁箱に留められている構造。
・ポンプが始動すると、流体の圧力を受けた弁体がヒンジを支点にドアのように開き、ポンプが停止すると、逆流により自然に弁体が戻り閉鎖する仕組み。
・抵抗が少なく流体が流れやすい。
・流体が下から上に流れる垂直配管のほか水平配管でも使用されているが、ヒンジは弁体を押しつける力が弱いため、水平配管では漏水が起きることがある。
・揚程(ポンプが流体を吸い上げる高さ)が高い配管などでは、逆流の圧力が強く弁体が急激に閉じられることにより、配管内に瞬間的に高水圧がかかり衝撃が発生するウォーターハンマー現象が起きる。
・ウォーターハンマーが発生すると、高水圧により配管、ポンプ、バルブ、継手などが破損する可能性がある。その防止のため、スイング式チャッキバルブが使用できるのは、揚程が低く水平方向の距離も短い、逆流の圧力が少ないといった条件の配管に限られる。

スイング式チャッキバルブ_20200909

(2) リフト式
・垂直方向にスライドする弁体によって開閉する。
・ポンプ稼働時は流体の圧力によって弁体が押し上げられて流路を開放、停止すると弁体の自重によって自然に下降し、閉鎖する仕組み。
・構造上、流路がS字状またはクランク状になるため抵抗が大きく、小口径の配管に適している。
・弁体が上下に動くため水平配管にしか使用できないが、構造が単純で可動部が少なく、故障が生じにくい。

(2*) スモレンスキ式
・リフト式の一種として位置づけられるが、仕組みは異なる点も多い。
・スプリングを内蔵し、その力を利用してポンプ停止後の逆流発生前に弁体を閉じることにより、ウォーターハンマーの発生を防ぐ。衝撃吸収型逆止弁、あるいは急閉鎖型のリフト式チャッキバルブとも呼ばれる。
・ポンプ稼働中は流体の圧力によって弁体が押し上げられ、流路が開放される。ポンプが停止し流体の圧力が弱まると、相対的にスプリングの力のほうが強くなり、逆流発生前に弁体を閉じることができる。
・構造上、通水中も弁体が流路の中にあるため抵抗が大きいが、使用条件の制約が少ないことから、高層ビル、水道事業所、工場、プラント設備などで広く利用されている。

スモレンSM型_20200909

(3) ウエハー式(デュアルプレート式)
・半円形の弁体を2枚組み合わせ、それぞれヒンジとねじりコイルスプリングにより中央部に留めた構造。
・通水時は、蝶が羽を閉じたように2枚の弁体が中央で重なって流路を開放し、ポンプが停止するとねじりコイルスプリングの力によって弁体が開き、円板状となって閉鎖する仕組み。
・スモレンスキ式と同様、ポンプ停止後の逆流前にスプリングの力で弁体を閉じることにより、ウォーターハンマーを防止する。
・バルブ本体にフランジを持たず、配管のフランジに挟み込むように設置するシンプルな構造で価格が手頃。
・薄型・軽量で設置スペースをとらず、施工も容易なことから、ポンプ室が手狭な中規模ビル、工場などで利用されている。
・弁体の開きが大きく流体が流れやすいため抵抗損失が少ない。
・水平・垂直どちらの配管にも適用できるが、ポンプ直上やエルボ部のように配管内で流れが偏る場所に設置すると弁体にかかる圧力が偏り耐久性が損なわれる。
・2枚の弁体が中心のヒンジ部のみで支えられている構造のため、耐久性はやや劣る。

ウエハーチャッキ_20200909

(4) ボール式
・弁体はゴム製のボール。ポンプが始動すると水流によって押し上げられて流路を開放し、ポンプが停止すると逆流と引力でボールが戻り、閉鎖する仕組み。
・他のチャッキバルと異なり、弁体を開閉する支点がないシンプルな構造であるため、異物が内部に絡まりにくくメンテナンスも楽である。そのため、汚水・廃水など異物の混入の多いラインに多く利用されている。
・ポンプ停止時の逆流とともにボールが閉じる構造で、逆流の発生を防ぐことができない。揚程が高く逆流の激しい配管ではウォーターハンマーが発生する。
・水平配管にも使用できる。その場合、点検口が上になるよう設置する。垂直配管の場合はウォーターハンマーが発生しない条件が必要。
・構造上、大口径、高圧力に対応しにくく、口径150A、圧力10Kまでが主流。

ボールチャッキ_20200909

「スモレンスキ・チャッキバルブ」のメリット

株式会社イシザキの「スモレンスキ・チャッキバルブ」は、スプリングを内蔵した急閉鎖型のリフト式逆止弁です。1953年に特許を取得して以来、チャッキバルブの決定版として国内外のさまざまな設備に採用いただいています。数多くのお客様から選ばれる理由をご紹介します。

■ ウォーターハンマーが発生しない
内蔵したスプリングの力を利用してポンプ停止後の逆流が発生する前に弁体を閉じることにより、ウォーターハンマーを防ぎます。そのため、揚程が高い高層ビルなどの垂直配管にも使用可能です。

【スイング式チャッキバルブとの動作比較】
◯通水時
ポンプが始動するとAの圧力が上昇し、弁体を押し上げ、Bを通じCの方向へ流出します。
◯ポンプ停止時
スモレンスキ式では、ポンプの停止と同時にポンプ揚水力と流水力が減少していく一方で、スプリングの力が作用して弁体が瞬時に閉鎖します。
スイング式はまだ開いている状態です。
◯ポンプ停止後
スモレンスキ式では、配管内の水が逆流し始める前に弁体が閉鎖されているため、逆流を急激に阻止することがなくウォーターハンマーが起きません。
スイング式は逆流によって弁体が急激に閉鎖されるため、ウォーターハンマーが発生してしまいます。

Pomp

【スイング式チャッキバルブとのウォーターハンマー防止性能比較】
下のグラフはスモレンスキ式のウォーターハンマーの波形データをスイング式と比べたものです(特許取得時の使用データ)。スモレンスキ式ではほとんど衝撃が起きていないことがわかります。

WaterHammer_Graph

■ 高い止水性、弁漏れを起こさない
弁体をスプリングの力で押さえることに加え、シート状のゴムパッキンを採用することによって確実かつ安定した止水効果を発揮、水平配管でも漏水を起こしません。

■ 耐久性が高いため経済的
弁体を上部・下部ガイドの2点で支持する構造により、他のチャッキバルブの数倍の耐久性を実現しています。バルブ自体の価格は多少上がりますが、寿命が長いためにLCC(Life Cycle Cost)は低く抑えられ、経済的と言えます。

■ 幅広い液体に使用できる
本体の素材は鋳鉄・ダクタイル鋳鉄・鋳鋼・ステンレス・青銅から、ゴムパッキンの素材もNBR・EPDM・FMK・PTFEから選ぶことができ、高温・薬液などさまざまな条件の流体に対応可能です。(高温・薬液で使用する場合はお問い合わせください)

■ スプリング強度の変更も可能
使用条件に応じて、スプリングを最適な強度のものに変更することができます。

「スモンレスキ・チャッキバルブ」の種類

「スモンレスキ・チャッキバルブ」には、本体素材、タイプの異なるさまざまな種類があります。どのような素材が用いられているのか、各タイプの違いはどこにあるのか、簡単にご紹介します。

■ 本体素材
流体の種類や温度などによって異なる使用条件に対応できるよう、素材のバリエーションを持たせています。それぞれの素材には次のような特性があります。

【鋳鉄(ちゅうてつ)】 材質記号:FC
一般的には2.14~6.67%の炭素を含む鉄を指す。金属を溶融させて型に流し込み成形する鋳造(ちゅうぞう)のプロセスに適していることから鋳鉄と呼ばれる。

【ダクタイル鋳鉄】 材質記号:FCD
鋳鉄では、多く含まれる炭素が黒鉛(グラファイト)として固相化する。この黒鉛の形を球状にすることで強度や靱性を高めたものをダクタイル鋳鉄、あるいは球状黒鉛鋳鉄と呼ぶ。黒鉛が片状の鋳鉄よりも数倍の強度を持つ。

【鋳鋼(ちゅうこう)】 材質記号:SC
炭素を0.04~2%前後含む鉄を鋼(はがね、こう)と呼び、鋳鉄よりも高い強度と靱性を持つ。この鋼を鋳造プロセスによって加工したものが鋳鋼である。鋳鉄よりも強度と靱性に優れているが、ハンマーなどで叩いて圧力を加える鍛造プロセスで加工された鋼には劣る。

【ステンレス】 材質記号:SUS
正式にはステンレス鋼と言い、鉄にクロムなどを加えた合金。ISO(国際標準規格)やJIS(日本産業規格)では、炭素含有量が 1.2 %以下、クロム含有量が 10.5 %以上の鋼と定義される。錆びにくいことに加え、耐熱性や加工性などに優れている。

【青銅(せいどう)】 材質記号:CAC
銅を主成分とし、錫(すず)や亜鉛、鉛などを加えた合金。ブロンズとも呼ぶ。柔らかい銅に錫を加えることで硬度が増し、加工、利用しやすくなる。色の名前としての青銅色は鈍い青緑色を指すが、素材としての青銅の色は添加する材料によって赤銅色から、黄金色、白銀色などに変化する。

■ タイプ
設置場所や流体の種類などに応じて、異なるタイプをラインアップしています。それぞれのタイプについて、10K/20Kの呼び圧力(JISで温度ごとの最高使用圧力を定めた数値)と各種の呼び径(配管の外径サイズ)に対応したバリエーションがあります。

【ストレート】
ストレートSM型:本体は鋳鉄製。10K 25A~300Aまでの主要部品は耐久性の高いSCS13製。

SM

ストレートSMC型:日本水道協会認定登録品。浄水場や高層建築などの吸水ラインに適合したナイロンコーティングを施しています。

SMC

ストレートSMS型:本体と主要部はオールステンレス製で幅広い流体に対応。純水ライン向けに禁油処理・脱脂処理も行います。

SMS

【アングル】
SML-DT型:配管の角部分に設置できるアングルタイプ。配管から外すことなく点検・メンテナンスが可能で、異物が絡みにくい構造となっており、汚水に適用できます。受注生産品です。

【コンパクト】
20KコンパクトSMT型:手狭なポンプ室に対応したコンパクトタイプ。受注生産品です。

【ねじ込み】
ネジこみSMG型:15~32Aの細い配管に対応したねじ込みタイプです。

SML-DT_SMT_SMG

まとめ

水をはじめとする流体を扱う配管につきもののチャッキバルブですが、構造や材質によって異なるさまざまな特性があり、用途に応じてそれぞれの特性を活かした最適なタイプを選定することが大切です。
株式会社イシザキでは、ウォーターハンマーというチャッキバルブにつきものの課題を克服した「スモレンスキ・チャッキバルブ」を開発し、給排水衛生設備全体の長寿命化に貢献してきました。チャッキバルブの導入・更新の際には、ぜひご相談ください。

※製品についての詳細は以下をご参照ください。

▼チャッキバルブ 製品一覧
https://ishizaki.biz/stock.html

▼カタログ・ダウンロード
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